Home参考書・辞典・資格・語学連載コラム子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情第11回 アメリカの学習指導要領の特徴

連載コラム

幼児小学生

子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情

第11回 

[2010年08月12日 公開]

アメリカの学習指導要領の特徴

織井弥生

アメリカと日本の小学校では、学ぶ内容や学び方にどのような違いがあるのでしょうか。
カリフォルニア教育省と文部科学省の指導要領を、実際の教室運営の様子から比較してみます。

アメリカはらせん型カリキュラム

アメリカでは、教育は州ごとの管轄ですので、学習指導要領も州によって定められています。
とはいえ、実際は州による大きな違いがあるわけではありません。

私の住むカリフォルニアの教育省が定める指導要領は、義務教育の始まるキンダーガーテン(日本の幼稚園年長に相当)から高校最終学年の12年生までの各科目について細かく規定されています。

日米を比較するにあたり、言語の違いに左右されにくい算数を取り上げてみますと、大きく2つの特徴があることに気づきます。

  • アメリカでは、早期から広い単元を扱い、学年が進むにつれステップアップする。
    一方、日本では、学年に応じて単元を集中的に扱う傾向がある。

  • アメリカは、データの扱いと理論的思考を重視する。

アメリカでは、キンダーガーテンレベルから広範囲の単元を扱い、徐々に毎年内容を高めていきます。

例えば、数の分野では、アメリカでは、2年生から分数や概数が登場し、2年生のうちに1/2から1/12まで学びます。
日本では、新学習指導要領に従い、ようやく分数は2年生から始まるようになり(旧学習指導要領では4年生)、概数は4年生から始まるようになります(旧/新学習指導要領ともに)。

アメリカの教室では、「丸いピザを均等に分けるにはどのような方法があるでしょう?」というような身近な題材を扱います。
ピザは、アメリカ人の食卓には無くてはならないものであり、大きなピザを人数に応じて何枚に分けて切るかということは、日常生活と密接したテーマです。

アメリカの学校では、図形も低学年から学習します。
キンダーガーテンで、立方体と球、1年生で直方体、というように毎年少しずつ分野を広げていきます。

一方、日本では、新学習指導要領では3年生で球、4年生で立方体・直方体が登場します(旧学習指導要領では、6年生で初めて立方体が登場)。

「表とグラフ」については、アメリカでは1年生からデータの読み取りと整理に慣れさせます。

日本で「表とグラフ」を学習するのは、旧学習指導要領では3年生でしたが、新学習指導要領では2年生に引き上げられました。

もうひとつアメリカの算数教育で重点項目となるものに、数学的に推論する力の育成があります。
具体的には、質問にアプローチする力、スキルやコンセプトを使って解を導く力、解法を他の設問に応用する力とされています。

確かに、アメリカの先生は、低学年のうちから、「どうやって考えるか」「なぜそう考えるか」を強調する授業をします。
推理すること、考えのロジックを構築することは、算数に限らず、多くの科目で重視されることです。

このほか、アメリカでは、一次方程式と座標が4年生、負の数が5年生で登場することも、日本と比べて特徴的に早いといえます。

このように、アメリカでは、低学年から薄く広く学習し、学年が進むごとに内容を高めていくカリキュラムが進められています。
学年を縦断して単元が細分化されているため、授業ではあっという間に次の単元へ進んでいきます。

日本では学年に応じて特定の大単元をじっくりと取り組むことが多いので、これに慣れた親からしてみますと、「あれ、もう別のことをしている」と驚かされることがしばしばあります。

ちなみに、アメリカのかけ算は、2の段・5の段・10の段が2年生、「10X10」のかけ算までが3年生の範囲となっています。

わり算については、日本は3年生で余りのあるわり算まで扱いますが、アメリカでは割り切れるわり算が3年生、余りのあるわり算が4年生と分かれています。

日本のように学年相応の理解力をもってじっくり取り組むのがよいのか、アメリカ式にらせん状にレベルアップしていくのがよいのかは、賛否の分かれるところではないでしょうか。

ただ、文部科学省が新しい学習指導要領で、従来よりも低学年から開始する単元を増やしていることは、多少なりとも、らせん式のカリキュラムにメリットを求めているからかもしれません。
ただ、私の子どもたちを見ている限り、アメリカの「広く・浅く」の学習進行には、集中力の低い低学年のうちは「これもできるようになった」「あんなことも勉強した」という達成感が感じられやすく、さまざまな分野への興味が広がるという利点があるように感じられます。

教科書は分厚く学校所有

アメリカの教科書は、日本の電話帳ほどの厚さと重さがあります。
特に、5年生あたりからは内容が更に充実し、1冊1キロくらいの重さになります。
どの科目も、図表や写真が多く、説明や練習問題もたっぷり掲載されています。

これらの教科書は学校所有であり、生徒は学校から1年間借りるのです。
毎年受け継がれて使うため、線やマーカーをつけることは禁止され、大切に扱わなければなりません。

ドリル類はひとり1冊ずつ個人で使うものを与えられますが、こちらもかなりのボリュームがあり、厚さは1~2センチあります。

低学年のあいだは、教科書やドリルを毎日自宅に持ち帰ることはありませんが、高学年になれば、時間割に応じて2、3冊の教科書とその日に使う全教科のノート・参考書・ドリル類をバッグに入れて行くことになり、相当な重さが肩に食い込みます。

小学生は自家用車やスクールバスの利用が多いため、重い荷物を持ち歩くことはあまりありませんが、中学・高校となるにつれ、徒歩通学する子も増えますので、彼らにとっては相当な重労働です。

そういえば、私の大学院時代も、かばんに入りきらないほどのテキストとファイル類を抱え、毎日フーフーいっていましたが、周りのアメリカ人は当然といった顔をしていました。

考えてみれば、彼らは小さいころから重い教科書を持ち運ぶことには慣れていたのです。
最近では分厚い教科書類が電子書籍化される動きもありますが、小学生レベルにまで浸透するにはまだ時間はかかりそうです。

織井弥生 (おりいやよい)

織井弥生(おりいやよい)

幼少時6歳までをアメリカ合衆国にて過ごす。 
上智大学外国語学部英語学科卒業。
大手メーカー勤務後、日米教育委員会フルブライト奨学生として、トップビジネススクールのノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、卒業(MBA)。
エンタテインメント企業、インターネット関連ベンチャー企業等で事業企画、マーケティングに従事。
2001年より日米間を行き来し、子ども(現在現地校小6と小1)を日本とアメリカの公立・私立校に学ばせる。
現在、カリフォルニア州に在住し、教育関連のコンサルティングと執筆を行うほか、アメリカ在住の日本人の現地生活適応を手助けする「海外生活サポートサービス」代表を務めている。
訳書に「マーケティング戦略論」(ダイヤモンド社)ほか。

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