Home参考書・辞典・資格・語学連載コラム子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情第13回 自主性ある学習姿勢

連載コラム

幼児小学生

子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情

第13回 

[2010年10月20日 公開]

自主性ある学習姿勢

織井弥生

アメリカの学校では、小学生のうちから、自主性をもって学習する姿勢を持つように指導されます。
勉強するもしないも、すべて自分の責任だということを教えられます。

教科ごとに学習ルールを明確化

アメリカの学校では、幼稚園から高校まで、学年始めの9月の平日の夜に、Back to School Night (バック・トゥ・スクール・ナイト)という一種の保護者会が開かれます。
Back to School Night では、先ず、校長が学校の現在の状況やこの1年の方針を説明します。
その後、各ホームルームのクラスに分かれて、担任がクラス運営について、また、各教科の教師が授業の方針について説明します。
各教科の教師は、以下のことを中心に話をします。

・この1年の学びのゴール
・授業の進め方(学習計画)
・授業態度に関する方針(罰則など)
・使用する教材
・宿題の方針、提出の仕方(締め切りを過ぎたときの扱いなど)
・テストの方針(テストの種類、遅刻・欠席した時の扱いなど)
・成績の評価方法(評価項目と比重)
・保護者に期待すること(家庭での指導など)
・教師への連絡方法

保護者にとって、Back to School Night は、学習内容と教師の考え方を知る重要な機会です。
新しい学年の重要なスタート地点ですので、父母二人そろって出席する家庭も少なくありません。
両親が仲良く、時には手を握り合ったり肩を抱き合ったりしながら、先生の話を聞いている姿を見るたびに、「日本の保護者会にはありえない風景だ」と私が実感する日でもあります。

保護者サイドからは、「レポートやプロジェクトはどのくらいの頻度で出されるのか」、「テストは記述式が多いのか」、「あなたの経歴は?教員経験は?」などの質問も積極的に聞かれます。
教師は、すべての質問に対して、明瞭な答えを出すことが期待されます。
毅然としたリーダーシップをもって生徒を指導し、学力を伸ばす教師が支持されること、また、それが自分たちの職を確保することにつながるということを、教師たちはいやというほどわかっています。
つまり、教師にとって、Back to School Night は、保護者の信頼を勝ち得るための関門なのです。

また、保護者にとっても、この夜は、教師の人柄と指導方針を理解する大切な意味をもつだけでなく、わが子と自分をアピールする機会でもあります。
一通りの説明が終わって自由解散となった後は、教師の周りに保護者が群がり、「私はジョンの母です。元気旺盛な子ですので宜しくお願いします」、「娘のレイチェルは、先生のクラスに入れてラッキーです。慎重で頑張り屋です」などと積極的に話しかけます。

日本人の親は、先生に自分の子どもを必要以上に売り込むことはあまりしませんが、アメリカ人には「親バカ」は当たり前、という面があります。
自分の愛する子どもの良い面を先生に理解してもらうのは当然、という考えなのです。
日本人の親は、とかく控えめにしているがゆえに、自分の子どもに注目してもらえず悔しい思いをすることがありますが、アメリカの学校では、周りにならってわが子を先生に理解してもらう努力が必要です。

Back to School Nightで説明される内容は、当然のことながら、授業時間内に、生徒たちにもしっかりと説明されています。
教科ごとに学習目的とクラス進行のルールを明確化することは、生徒本人と保護者の目的意識を高めるうえで、非常に有効だといえます。

宿題・テスト・発言が成績の三本柱

子どもの成績が気になるのは、どこの国の親も同じです。
Back to School Nightでも学習成果の評価方法は重要なトピックスです。

アメリカの学校の成績は、絶対評価が基本です。
宿題、テスト、スピーチなどの発表、レポート、プロジェクトなどの点数が、学期を通じて積み重なっていきます。

中学・高校では、通常、これらに加え、授業への参加という項目が加わります。
授業への参加というのは、単に出席するということではなく、積極的に授業で発言したか、という意味であり、よほど講義中心の授業でない限りは重視されます。
アメリカの学校は、小学校のうちから、授業でディスカッションすることが多く、高校・大学になればますますその意味は大きくなります。
ディスカッションには、自分の意見を人にわかるように説明する、人の考えに耳を傾ける、意見交換することで議論を深めるという学びがあります。

高校以降では、各評価項目の比重がシラバス(学習計画を明記したメモ)に必ず示されるようになります。

(例) テスト、クイズ(小テスト)  50%
  レポート、プロジェクト 30%
  授業への参加         20%

生徒はこれを知ることで、授業にどのように取り組んでいったらよいかを考えることができます。

授業の評価方針は担当の教師が独自に定めるものです。 大学などで同じ科目に複数の講座がある場合でも、教師によって授業の方針はさまざまですから、自分にとって有利な評価の仕方をする講座を選ぶことができます。

私が留学していたときは、授業内容が最も優先されはしますが、成績をつけるうえで、授業中の発言のウェイトを高くすると明言している教授より、得意のレポートの比重が大きいクラスを取ったりしました。

これらの評価項目は、すべて点数化され、学期末まで集計され続けます。 そして、最終的な獲得点数の合計が、すべて満点だった場合の全点数のうち何パーセントだったかという数値を出します。ということを基準として総合的な最終評価が出されます。
これは、次の式で表されます。 (生徒が獲得したすべての評価対象の合計点数)/(獲得しうる総点数) × 100 (単位は%)

その数値をもとに、最終評価が出されます。以下は、私の子どもの通う中学校の例です。
A 100-93 
A- 92-90
B+ 87-89
B 86-83
B- 82-80
C+ 79-77
C 76-73
C- 72-70
D+ 69-67
D 66-63
D- 62-60
F 59以下

自主性を育てる

授業の方針が明示されることの裏側には、生徒が自主性を持って授業に参加し、自分の学習に責任を持つことを促す目的があります。
「忘れ物をしたら5点減点」「提出物の遅延はいかなる場合も認めず、点数はゼロ」「テストの間違いを考察し、やり直して提出した場合は5点加点」などの細かい規定が事前に説明されているので、生徒は先生の処置に対して反論する余地がありません。

小学校の場合はさすがにそこまでは厳しくはありませんが、「テストの日に欠席したら○日以内に追試を受けること」、「レポートやプロジェクトの提出は、正当な理由が期限前日までに説明されれば1日だけ遅れを認める」、「宿題には保護者のサインを入れること」などのルールがあります。
ちなみに、小学校はホームルーム(所属する組)の先生が全教科を教えることが多いため、全教科に同じルールが適用されることが一般的です。

保護者は、これらの決まりを守らなければならないことを子どもに教える役割があります。
特に低学年のうちは、保護者が子どもの宿題に積極的に関わり、家庭で学習指導をすることが期待されています。

また、小学校のうちはホームルームの教室でほとんどすべての教科が教えられますが、中学校になると、教科ごとに教室を移動します。

日本の中学校では、特別教室で行われる授業以外は、先生が生徒の待つ教室にわざわざいらしてくださいますが、アメリカでは、先生の部屋に生徒たちが入っていきます。
アメリカの生徒は、授業をしていただくために、先生の待つ場所に行く、という姿勢があります。

個々の生徒で授業スケジュールが違いますので(習熟度別授業や選択授業があるため)、生徒は、自分の授業に合わせて自主的に行動することが必要です。

Math (数学) はMr.Jones の教室、Literature (文学) はMrs. Smithの教室、というように、コマごとに重い教科書とバインダー類を抱えて移動するのです。
おまけに、移動時間は2分ほどしかありませんので、廊下にあふれるほかの生徒に押されて遅刻などしないように、走ってでも授業に間に合わせなければなりません。
アメリカの学校では、遅刻に対しては非常に厳しいのです。

このように、アメリカには、学校の学習に取り組むのは生徒個人の責任であり、フォローするのは保護者の責任だという考え方が基本にあります。
日本の学校は、親切すぎるほど生徒の面倒見が良く、保護者の側も学校に対してきめ細かい指導を期待しますが、アメリカでは、教師(学校側)と生徒との関わり方に、ある種の厳しさがあります。
しかし、それは良いことばかりではありません。
家庭環境や経済的事情により、保護者から十分なサポートを得られない子どもは、学校の学習ペースから落ちこぼれていってしまう危険性がおおいにあることも事実です。
アメリカの学力格差の要因のひとつが、ここにあるといえます。

織井弥生 (おりいやよい)

織井弥生(おりいやよい)

幼少時6歳までをアメリカ合衆国にて過ごす。 
上智大学外国語学部英語学科卒業。
大手メーカー勤務後、日米教育委員会フルブライト奨学生として、トップビジネススクールのノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、卒業(MBA)。
エンタテインメント企業、インターネット関連ベンチャー企業等で事業企画、マーケティングに従事。
2001年より日米間を行き来し、子ども(現在現地校小6と小1)を日本とアメリカの公立・私立校に学ばせる。
現在、カリフォルニア州に在住し、教育関連のコンサルティングと執筆を行うほか、アメリカ在住の日本人の現地生活適応を手助けする「海外生活サポートサービス」代表を務めている。
訳書に「マーケティング戦略論」(ダイヤモンド社)ほか。

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