Home参考書・辞典・資格・語学連載コラム子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情第14回 アメリカ人の論理的思考

連載コラム

幼児小学生

子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情

第14回 

[2010年11月10日 公開]

アメリカ人の論理的思考

織井弥生

アメリカ人と会話をすると、どんなことにも意見をはっきりと言い、必ず “because…” と理由を述べることに気がつきます。
一方、日本人は、普段の会話では、むしろ自分の考えをあいまいに表現することが多いものです。
これには、子どものころから教えられてきた物事の考え方や表現方法の違いが背景にあると思われます。

論理的思考と表現の訓練

日本とアメリカの学習スタイルで何が大きく違うかといえば、アメリカでは論理的説明力を鍛えること、日本では記憶型説明力を鍛えることだといえるでしょう。
この特徴は、小学校の授業運営にも現れます。

授業中に先生が質問を投げかけ、ある児童が自分の考えを述べたとします。
児童の答えが単に結論だけを言ったものである場合、先生は必ず、“Why do you think so?” と聞き返します。
その児童は、 “Because….” と理由を述べなければなりません。
厳しい先生だと、”It is because …” または “That’s because…” などの完全な文章(complete sentence)で答えるように直させます。

いずれにしても、ここで求められているのは、考えの根拠を、人に分かるように説明することです。
意見があるからには根底となる理由があるはずであり、それを相手に説明することを、アメリカ人は小学生のうちから、学校や家庭で繰り返し求められながら育ちます。

低学年のうちは、思いつきで手を挙げて発言することはありますが、学年が進むにつれ、単なる思いつきで発言したところで、先生から理由を突っ込まれると分かるようになります。
ですから、初めから考えの筋道をつけて発言をするようになります。

レポートやスピーチなどの学校の課題でも、Logical Thinking (ロジカル・シンキング)、つまり論理的思考が指導されます。
レポートにおいては、ガイドラインと呼ばれる指針が渡されることが多く、それには、最も基本となる5パラグラフ・エッセイの構成に盛り込むべきポイントが示されています。
エッセイのジャンルやテーマにもよりますが、主題・その根拠を二つ以上・結論、を含むことが主要な共通点として挙げられます。

大学院レベルのレポートにおいても、同様です。
実際に、私がビジネススクール(経営学の大学院)に留学した際、さまざまな講座でレポートが課されましたが、レポートの構成と内容について、細かく指定されたことがあります。

アメリカでは小学4年生から本格的なスピーチが始まりますが、ここでも、構成ありきです。
ガイドラインに沿って原稿が書かれているかということがチェックされ、その上で内容に関して評価されます。

このように、アメリカの学校教育におけるライティングとスピーキングには、ある種の「型」を教えられるわけですが、それは、論理的に主張を展開するうえで非常に合理的です。
アメリカ人は、論理展開の型を早いうちから体得し、学年が進むにつれて、テーマをレベルアップし、論理的思考と表現スキルを高めていく練習が繰り返されます。

日本では、読書感想文などを小学校低学年から書き始めますが、あるテーマに基づいて自分の意見をまとめる論文形式の文章を書く機会は、高校までほとんど無いのが現実だといえるでしょう。
大学以上の学問や社会に出てからの実務を考えると、早くから論理的な表現方法を体得しておくことは、有益であるのに違いありません。
大学の卒業論文を書く頃になって、「論文の書き方」のハウツー本を読むのでは遅すぎるように思います。

クリティカル・シンキングという思考スキル

論理的思考と並んで、アメリカの教育の特徴的なものに、Critical Thinking(クリティカル・シンキング)があります。
Critical Thinkingを直訳すると、「批判的思考」となりますが、実情は、日本語の「批判的」という語句からはニュアンスが違います。
アメリカでいうところのクリティカル・シンキング は、与えられた前提や条件から客観的に推測・検討・分析する考え方を指します。
その過程では、主観や先入観を排除し、仮説の正当性や根拠を検証し、あらゆる角度から可能性を探ることを試みます。
エッセイやスピーチで「型」が細かく指示されたのとは対照的に、クリティカル・シンキングでは、シンプルな課題が提示され、そこから生徒に自力で考えさせる手法が取られます。

クリティカル・シンキングは、教科を問わず、様々な形で取り入れられます。
学校の課題で出た具体例を示しましょう。

  • 3年生の算数:(ある五角形をついて)この図形の特徴をなるべく多く、文章で書きなさい。
  • 4年生の算数:(二つの図形をついて)これらの図形の似ているところと違うところを、項目を立てて書きなさい。
  • 5年生の英語:(二つの単語グループについて)Aグループの単語とBグループの単語には関係があります。説明しなさい。
  • 6年生の社会:(世界史):釈迦の人生とキリストの人生とを比較しなさい。
  • 7年生の文学:(教材となっている小説の)登場人物Aの第5章の行動の正当性を述べなさい。

クリティカル・シンキングでは、問題解決のための情報収集や調査、理論の構築、表現方法の選択も生徒が自立的に行います。
上記の6年生の問題例では、釈迦とキリストの人生の何に注目するかということが大きなポイントです。
個人的な人生の部分、生存中の社会との関連、死後の教えの拡大など、多くの着眼点がありますが、広く調査をしたうえで、着目したい箇所を選ぶプロセスが作業の中心となります。
それには、様々な切り口を考え、比較検討する必要があります。

クリティカル・シンキングでは、提示された課題の正当性を疑っても構いません。
上記の7年生の問題例で、登場人物Aの行動が正当でないと考えることもでき、その場合はそれを支持する理論を展開すればいいのです。
インターネットで多くの情報がたやすく豊富に入手できるようになりましたが、レポートを書く上で、情報を鵜呑みにしないということも、クリティカル・シンキングの一端です。

日本で、レポートや卒業論文にインターネットで検索したコンテンツをコピー&ペーストして提出する大学生の存在が問題となっているようです。
そもそも、引用という形ではなく、他人の著作物を自分のものであるかのように使うモラルの無さに呆れますが、誰もがどんなことも発信できる危うさを抱えるインターネットの情報に対して、警戒感を抱かないのは、クリティカル・シンキングを持ち合わせていないことの裏返しです。

自立した柔軟性ある思考能力

アメリカのロジカル・シンキング、クリティカル・シンキングは、学校教育の重要なポイントであるだけでなく、アメリカ社会の文化と密接なつながりがあります。

日本人は、日本人同士でコミュニケーションを取る場合は、はっきりした言葉や表現に拠らない独特の通じ合いの文化を尊重することで、かえって物事が上手く進む場合が多いかもしれません。
しかし、外国の人たちとコミュニケートする場合は、このようなロジカル(論理的)な思考やクリティカルな思考が必要であることをもっと意識する必要があるでしょう。
特に、グローバルな経済や政治の場面では、欧米流の思考と表現方法を用いることが、同じ立場で議論する上で重要だといえます。

日本は、いまだに記憶重視の教科教育に偏重しています。
日本人が、柔軟性のある思考力を持つことは、日本の文化・伝統を守ることとは別の次元で、重要な課題であるはずです。
そのために、小学生のうちから、論理的に考え、物事を様々な角度から捉える訓練を取り入れることは、意義のあることだと思われます。
今年のノーベル化学賞を受賞した、アメリカのパデュー大学特別教授の根岸英一さんは、「私は日本の受験地獄の支持者だ」とおっしゃっています。
その理由については、研究が高いレベルになろうとも、基本が大事だからだということです。
これは、日本の記憶重視の詰め込み式教育が、基礎的学力を築く上で有効だということを示してはいます。
しかし、問題なのは、記憶型詰め込み教育に疲れてしまうのか、現代の日本の学生が、柔軟な発想をもって世界にチャレンジする意欲を失っている傾向にあることです。
これが、日本の直面している大きな課題のひとつだと思います。

日本でも、子どものロジカル・シンキング、クリティカル・シンキングを鍛えるツールが少しは手に入ります。
以下に紹介しますのは、クリティカル・シンキングを軸にした算数のワークブックです。
興味のあるかたは、ご覧になってみてください。

<キンダーガーテンから2年生用>
【Math Test Prep That Matters!: Grades K-2: 50 Standards-based Math Prompts That Develop Students' Critical Thinking and Deepen Their Understanding of Key Math Concepts】

<3-4年生用>
【Math Test Prep That Matters!: Grades 3-4: 100 Standards-based Math Prompts That Develop Students' Critical Thinking and Deepen Their Understanding of Key Math Concepts】


<5年生以上用>
【Math Test Prep That Matters!: Grades 5 & Up: 100 Standards-based Math Prompts That Develop Students' Critical Thinking and Deepen Their Understanding of Key Math Concepts】

織井弥生 (おりいやよい)

織井弥生(おりいやよい)

幼少時6歳までをアメリカ合衆国にて過ごす。 
上智大学外国語学部英語学科卒業。
大手メーカー勤務後、日米教育委員会フルブライト奨学生として、トップビジネススクールのノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、卒業(MBA)。
エンタテインメント企業、インターネット関連ベンチャー企業等で事業企画、マーケティングに従事。
2001年より日米間を行き来し、子ども(現在現地校小6と小1)を日本とアメリカの公立・私立校に学ばせる。
現在、カリフォルニア州に在住し、教育関連のコンサルティングと執筆を行うほか、アメリカ在住の日本人の現地生活適応を手助けする「海外生活サポートサービス」代表を務めている。
訳書に「マーケティング戦略論」(ダイヤモンド社)ほか。

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