Home参考書・辞典・資格・語学連載コラム子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情第17回 ライティングの力 <小学校低学年編>

連載コラム

幼児小学生

子どもの可能性を引き出す アメリカ最新教育事情

第17回 

[2011年02月23日 公開]

ライティングの力 <小学校低学年編>

織井弥生

アメリカ人のコミュニケーションにとって、自分の意見を相手に明確に伝えることがどれだけ大切であるかということについては、これまでのコラムでもお伝えしてきました。
曖昧さやごまかしを好まないアメリカ人は、自分の考えを的確に伝えられることが、重要なコミュニケーションスキルだと考えます。
それは、スピーキング(話すこと)だけでなく、ライティング(書くこと)においても同じです。
今回は、アメリカ人がどのようにライティングの力をつけていくかということの中でも、特に、小学生の学習方法についてお話したいと思います。

恐れずに書くことを重視

アメリカの学校教育では、義務教育の始めであるキンダーガーテン(幼稚園年長)から、少しずつライティングの練習が開始されます。
英語のライティングが日本語の作文と大きく違う点は、日本語はひらがな(カタカナ)さえ知っていれば、文字で文章を書くことができますが、英語は、アルファベットを知っていても、単語のスペリングを知っていないと、文章で書き表すことが難しいということです。

アメリカのプリスクール(幼稚園年長以前)からフォニックスなどで発音とスペリングを徹底的に教えるのは、やがて本格的に始まるライティングに備える意味もあるのです。
とはいえ、キンダーや小学校1年生がスペリングを完璧にマスターしていることは、とてもまれなことです。
キンダーや1年生のライティングで、どの程度スペリングの間違いを指摘するかは、教師の指導方針によって様々です。
この年齢の子どもは、次のような間違いをよく起こします。

friend frend
about abaut
house haus
rain rein
bicycle bysikl

とにかく書くことを推進したい先生は、このような間違いを指摘せず、話の展開を主眼に置いてチェックし、コメントを入れて課題を返却します。
スペリングを間違えることを恐れて、書くことを躊躇するのは本末転倒だとする考えです。
この指導方針のメリットは、子どもたちに、知っている言葉を駆使してどんどん表現する姿勢を作ることです。

一方、スペリングにも正確さを求める先生は、間違ったスペリングの箇所に赤を入れます。
このスペリングミスの指摘も教師の考え方次第であり、学年相当の語彙のスペリングには厳しいけれども、学年レベルを越えた単語の誤りについてはそのままにされることが多いようです。

キンダーガーテンでは、自分の好きなこと、家族、友達、動物など身近なテーマに関して3センテンス前後で書きます。
長男がキンダーガーテンで書いた作文を紹介します。

‘My Friend’
My best friend is Ken. Ken and I went to same preschool. We are very good freinds (正しくはfriends) now.

【訳】
「友達」
ぼくの親友はケンです。ケンとぼくは同じプリスクールに行きました。ぼくたちは今ではとてもいい友達です。

作文用に渡される用紙は、せいぜい3センテンス程度が収まるもので、日本の絵日記のように、上半分に絵を描くスペースが設けられています。
スペリングは、「友達」のfriendが正しく書かれているところもあれば間違っているところもありますが、直されることはありませんでした。
あくまでも、テーマに即した内容の文章を書く、ということが主眼です。

話の展開に着目する1年生

1年生になると、5センテンス前後まで分量が増えます。
学校活動や家族との生活など、主に自分の体験に関するテーマが広がるほか、ブックレポート(読んだ本のまとめと感想)も始まります。
1年生レベルで重視されていることは、「どんなことが起きたか」「様子はどうだったか」など、描写の詳しさや自分の考えをやや掘り下げる練習です。
長男が1年生で書いた作文です。

‘See me in March’
I had fun in March. In School we wached(正しくは watchedだが、先生は修正せず) the stations of the Cross. On St. Patrick’s Day we had fun. The Suessical the musical was funny. I like the new table groups because I have my good friends in my table. When we ran the walk-a-thron, I got four or five laps.

【訳】
「3月の私」
3月は楽しかったです。学校で「十字架の道行き」(注:キリストが死刑の宣告を受けてから埋葬されるまでの14の場面を再現したもの)を見ました。セント・パトリックス・デーも面白かったです。「スージカル・ミュージカル」(注:子ども向けの絵本「ドクター・スーズ」をもとにしたミュージカル)はおかしかったです。教室の新しいグループは、仲良しがいるので好きです。歩け歩け大会では、4周か5周しました。
(*通っている学校がカトリックの私立校のため、宗教的な行事があります。)

先生からは、以下の評価項目がチェックされて返却されました。
・完全な文である。
・トピックが明らかである。
・学年レベルの単語が正しくつづられている。
・文字間、単語間に適切な間隔をあけて書いている。
・大文字を正しく使っている。
・句読点を正しく使っている。
文章中にfun, funny という単語が繰り返し出てきていますが、その点は指摘されなかったので、1年生レベルでは語彙の多様性はそれほど問われないということになります。

1年生の後半になると、3つのパラグラフの構成で書く練習が始まります。
長男のクラスでは、短いお話を「はじめに起きたこと」「次に起きたこと」「最後に起きたこと」の3つにまとめるブック・レポートの課題が頻繁に出されました。
物語の展開を簡潔にまとめるにはどの部分に注目すべきかということを考え、表現するとても良い練習です。
長男が1年生の後半の始めに書いたブック・レポートの例です。

Title: Caps for Sale
Author: Esphyr Slobodkina
Type of Book: Rainbow book
At the beginning of the book, a peddler sold caps, carrying them on top of his head.
In the middle of the story, he napped under the tree, and woke up to find that monkeys had the caps.
At the end of the book, monkeys gave the caps back to the peddler, and he sold the caps again.

この ‘Caps for Sale’ は、1940年初版以来多くの子どもと親に読み継がれてきた児童書の定番のひとつで、日本のアマゾンからも購入できます。

調べて書くレポートが始まる2年生

2年生になると、テーマが与えられ、それについて調べてレポートを書く練習が始まります。
必然的に、文章も10センテンス程度に長くなります。
2年生の2ヶ月目に「動物をひとつ選び、調べてレポートを書く」という課題が与えられた時に、長男が書いた文章です。

‘Hamsters’
Hamsters are rodents of mammals. Hamsters have little bodies and short tails. There (正しくはTheirだが、先生は修正せず) thick and soft fur can be long or short. The colors vary, such as gray, white, and brown. In the wild, hamsters live in dry places in Europe and Asia. They are nocturnal, which means they sleep during daytime and be active at night. Hamsters eat nuts and fruits. Their cheek bags can store food. Hamsters can be good pets to human beings.

【訳】
「ハムスター」
ハムスターは、哺乳類の齧歯(げっし)類の動物です。ハムスターは、小さな体と短い尾をもっています。ふさふさで柔らかい毛は、長かったり短かったりします。色はさまざまで、灰色、白、茶色などです。野生のハムスターは、ヨーロッパやアジアの乾燥した場所に住んでいます。ハムスターは夜行性で、昼間は眠っていて、夜になると活動的になります。ハムスターは、木の実や果物を食べます。ほっぺたには、食べ物をいれておく袋があります。ハムスターは、人間にとって素晴らしいペットです。

このレポートを書くに当たっては、家で飼っているハムスター(2匹)を観察したり、手持ちのハムスターの本を見たり、一緒にインターネットで調べたりしました。
「どんなことを書いたらハムスターについてよくわかるかな?」と文章の構築のヒントを私から与えつつ、子どもが自分でまとめました。
先生からは、事実の盛り込み方が良いと評価されました。

このほか、「家の近所についてのレポート」や、キリスト教の学校であることもあり「聖人についてのレポート」なども出されました。
いずれも、少なくとも5つの事実が記されていることが先生のチェックポイントとなっています。

このように、アメリカの低学年では、知っている事実、感じたこと、調べたことなどを、恐れずに文章に書き表す姿勢が身に付くよう指導されます。
スペリングミスを怖がらず、知っている単語を使って文章にすることが基本です。
日本でいえば、ひらがなでもどんどん書くということに通じるかもしれません。
次回のコラムでは、より長い文章やエッセイを扱う小学校3年生以降に焦点を当てて、引き続きアメリカの学校で指導されるライティングについてお話いたします。

ところで、ハムスターの話しが出ましたので、我が家の子どもたちも大好きな、ハムスターが題材となっているアメリカの小学校1-2年生向きの本をご紹介します。
教室でハムスターを飼っている2年生のクラスのお話です。

同じ’The Best ・・・ in Second Grade’は、他にも次の2冊があり、いずれも微笑ましい内容の読みやすい本です。



とても楽しい本ですので、機会がありましたら読んでみてください。

織井弥生 (おりいやよい)

織井弥生(おりいやよい)

幼少時6歳までをアメリカ合衆国にて過ごす。 
上智大学外国語学部英語学科卒業。
大手メーカー勤務後、日米教育委員会フルブライト奨学生として、トップビジネススクールのノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、卒業(MBA)。
エンタテインメント企業、インターネット関連ベンチャー企業等で事業企画、マーケティングに従事。
2001年より日米間を行き来し、子ども(現在現地校小6と小1)を日本とアメリカの公立・私立校に学ばせる。
現在、カリフォルニア州に在住し、教育関連のコンサルティングと執筆を行うほか、アメリカ在住の日本人の現地生活適応を手助けする「海外生活サポートサービス」代表を務めている。
訳書に「マーケティング戦略論」(ダイヤモンド社)ほか。

おすすめ商品

小学生の英語ドリル シリーズ

アルファベット・ローマ字・フォニックス
覚えておきたい英単語440
覚えておきたい英語の文

英語を学習したい小学生のためのCD付ドリル。
アルファベット、ローマ字、フォニックスや,国が作った小学英語副読本「英語ノート」の重要単語と英文に加え,中1前半の英文までをカバーした充実した内容の英語ドリルシリーズ。

バックナンバー

商品を探す

詳しく検索

カテゴリ

ISBN

978-

出版年月

売れ行き順 [参考書・辞典・語学]
もっと見る
最新/イベント/懸賞/公募情報 [参考書・辞典・語学]
[最新](12月14日UP)無料体験版公開中! 詳しくはこちら。 小学生のためのタイピングスタディブック
[最新](11月12日UP)■新学習指導要領での学習漢字(教育漢字)についてのお知らせ■ 小学生の新レインボー漢字読み書き辞典 第5版
[最新](3月15日UP)■新学習指導要領での学習漢字(教育漢字)についてのお知らせ■ 小学生向辞典・事典 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版 ワイド版(オールカラー)
[最新](3月15日UP)■新学習指導要領での学習漢字(教育漢字)についてのお知らせ■ 新レインボー小学漢字辞典 改訂第5版 小型版(オールカラー)
[最新](3月15日UP)■新学習指導要領での学習漢字(教育漢字)についてのお知らせ■ 新レインボー小学漢字辞典 改訂第5版 ワイド版(オールカラー)
もっと見る
編集部よりひとこと [参考書・辞典・語学]
「毎日ちょっとずつでも勉強してくれたら…」そんな悩みを解決! (4月10日UP) 早ね早おき朝5分ドリル 小3計算
「毎日ちょっとずつでも勉強してくれたら…」そんな悩みを解決! (4月10日UP) 早ね早おき朝5分ドリル 小2計算
「毎日ちょっとずつでも勉強してくれたら…」そんな悩みを解決 (4月10日UP) 早ね早おき朝5分ドリル 小1けいさん
「毎日ちょっとずつでも勉強してくれたら…」そんな悩みを解決! (4月10日UP) 早ね早おき朝5分ドリル 小5計算
「毎日ちょっとずつでも勉強してくれたら…」そんな悩みを解決! (4月10日UP) 早ね早おき朝5分ドリル 小4計算
もっと見る
販売部よりひとこと [参考書・辞典・語学]
この本をお使いいただいたお客さまからの声を紹介します。 (2月23日UP) 中学入試まんが攻略BON! 理科 天体・気象 新装版
超常現象専門誌「ムー」が、あなたを救う!? (8月23日UP) ムー公式 実践・超日常英会話
もっと見る
お知らせ [参考書・辞典・語学]
『深めて解ける! 英文法 OUTPUT』に関するお詫びとお知らせ (3月14日UP)
学習参考書『一問一答高校入試理科』に関する お詫びとお知らせ (10月26日UP) 一問一答 高校入試理科
■メディア紹介情報■ (10月7日UP) 書きこみノート 日本史
もっと見る
カテゴリで探す [参考書・辞典・語学]
幼児 参考書・問題集
小学生 参考書・問題集
中学生 参考書・問題集
高校生 参考書・問題集
一般 参考書・問題集
進路・就職
語学
辞典・事典・字典